デザインねこ

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映画「blank13」は面白い?面白くない?ネタバレ含む感想を書いてみた

先日見てきました、blank13。俳優の斎藤工さんが監督を務める初の長編ということで話題になっており、また「俳優の監督する作品だからあんまりかも〜」という声をピシッと黙らせるとっても素晴らしい作品でした。今回はそんなblank13の感想(ネタバレ含む)をつらつらと書いていきたいと思います。

 

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感想とネタバレ

ここをみている方はすでに映画についてご存知の方もいるかと思いますのであらすじなどの説明については省き感想を書いていきます。(記事の一番下にあらすじの引用を掲載していますので、まだあらすじを知らない方はそちらをご覧ください)

 

  

初見の感想としては、とても丁寧に作られた素晴らしい映画です。登場人物の細かな心の揺れ動きを丁寧に描いていて、観ていて小さい頃を思い出すような、家族に想いを馳せるような特別な感情が呼び起こされました。この映画のようなことは幸いなことに、自分の人生にはなかったけど、小さい頃の風景とか家族の揃った今の光景が頭に浮かびました。先日見たばかりですがもう一度見たいと思える作品です。ここからはネタバレも含むため、映画を楽しみにされている方はここまでがよいかと思います。

 

丁寧なカット

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映画を見るときにいつも思い出すのが、専門学校のゼミの先生に映画の解説をしてもらったときのことなのですが、その時は映画のカットから見える主人公の心情や性格、監督が表現したいこと、などを丁寧に説明してもらいました。主人公の心情が乱れているときのカット割や普段は見ないような不自然な構図を使ったときの受け手が感じる印象や効果、その意味などを先生が一つ一つを解説しながら説明してくれました。そして

 

映画では小説のように、性格の描写や心情の揺れ動きを説明しすぎるとクドくなるし、説明的になりすぎてつまらなくなるから映画はカットや構図などでそういった部分を表現しています。そのような言葉に頼らないビジュアルを使った表現はグラフィックの仕事でも相通じるところがたくさんあるので、普段から意識して映画を見るといいですよ

 

と教わりました。(この教えについてはまた別の記事にまとめます)そういった視点で見てもblank13は秀逸なシーンがたくさんありました。

 

 失踪していた父が見つかり家族3人で話すシーン

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このシーンですが、観客はまだ序盤のこの時点ではそれぞれの性格や心情、立場を掴むのは難しいのですがそれぞれのポジションによって、その心情や立場を表現しています。13年ぶりに見つかり余命が3カ月の父を絶対に許せない兄のヨシヒコ(斎藤工)は手前で影になるところに座っており父に対するネガティヴな感情が画面内に表現されています。対して奥にいる弟コウジ(高橋一生)は父のことを嫌いになりきれず父が見つかったことに対して兄と比較してポジティブな感情を持っており、実際このあと弟は父の病室を訪れます。

母はこの時点で2人の間に位置し、父が見つかったことに対してどちらの感情なのかということはまだ見てとれません。(後に母の父へ対する複雑な感情は映画の後半で表現されています)

 

弟(高橋一生)が初めて病室を訪れ父(リリー・フランキー)と会話するシーンの距離感や婚約者(松岡茉優)を伴い初めて病室を訪れてからの2カ月後に病室を訪れたシーンで父を映さないシーンのカットなど随所で余白があって見るもののイメージや体験に委ねるような丁寧なカットが印象的でした。

 

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 巧みな2部構成のような作り

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この映画は前半部分の父が失踪し見つかって亡くなるまで、そして葬儀のシーンで参列者が故人の想い出話をする2部構成になっています。物語のベースになる前半部分は淡々と粛々と描いており借金、父の失踪、家族の苦労というように内容は重く、後半は曲者揃いの父の葬儀の参列者によるの想い出語りへ。前半のトーンから一転しクスっと笑わせるコメディタッチなトーンへの転調。この後半のパートは出演者のアドリブ中心というのがスゴイ。

ちなみにこの転調を主人公の高橋一生さんは転調と感じていないようでFIGARO.jpの中でこのようにコメントしていました。

 

僕は転調と思っていないんです。楽しいことと悲しいことって、人生の中でミックスされていると思いますし。工さんともそんな話をしましたが、表現の仕方や使う言葉は違っていても僕たちが向いている方向は同じだと感じました。

 

madamefigaro.jp

 

この前半部分と後半部分の切り替わりでタイトルがでてくるのも良かったです。色々意味があるというか。

 

参列者たちの軽快なアドリブの中で徐々に見えてくる失踪した父親の人となり。前半のシーンと後半の参列者の語りがつながり父の別の一面が見えていきます。この2部構成の緩急の効き方がハンパない。野球でいうと前半は速球でゴリゴリきていたのに突然気の抜けたスローボールを投げられたみたいな感じでした。その抜き感がとても心地よかったです。人ってそういうものなんでしょうねって思いました。

 

伏線の回収が見事

 

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前半と後半を通して伏線の回収が鮮やかで気持ち良いです。

前半兄が隣の同性の葬儀の会場を見てから放った「死んだ時にその人の価値がわかる」というフレーズ。この言葉が後になって意味を持ってきます。また前半のコウジ(高橋一生)とリリー(父)の病院での再会時にかかってくる借金取りと思しき人からの電話や電話につけられた不思議なストラップ、コウジの作文など前半の伏線をサラサラと回収していきます。人ってとても多面的なものなんだなあというのがここでもわかります。

 

この他にも登場人物の演技はとってもよかったし、長回しやアドリブなどを多用して撮影しているというところにびっくりしました。

 

まとめ

今回は斎藤工監督作品「blank13」の感想とネタバレ少々でした。評価は公式サイトを見るとわかるかと思いますが、とにかく良かったです。なんとも言いようのないポジティブな感情をもらえました。いろんな映画祭でたくさんの賞をもらってるみたいですがそれも納得です。気になっている方はぜひ見て見てください。上映時間も70分とコンパクトでケツも痛くなりません(笑)

 

最後に流れる「家族の風景」の歌詞がものすごい染みます。もはやこの映画が壮大なPVにすら見えますね。

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本家ハナレグミバージョンもすごいいいのでこちらもぜひ!

www.youtube.com

 

今回は以上です!人間って深い!

下記には参考程度に本作blank13のあらすじや、受賞歴などを引用させていただいておきます。また今回の画像は公式サイトのyoutube動画よりキプチャして使用させていたきました。

 

あらすじ

音信不通だった父の死――。13年間の空白は埋まるのか?実話をもとに描く、ある家族の物語。
ギャンブルに溺れ、借金を残して蒸発し、13年間音信不通だった父が余命3か月で見つかった。母と兄は見舞いを拒否したが、コウジは子供の頃キャッチボールをしてくれた優しい父を思い、入院先を訪ねる。しかし金を工面している父の姿に失望し、家族の溝は埋まらないまま、父はこの世を去った。葬式に参列するのは、数少ない友人たち。彼らが語る父のエピソードによってコウジは家族の誰も知らなかった父の真実を知り、13年間の空白が少しずつ埋まっていく……。

特別ではないかもしれない、でも世界にたった一つしかない、家族の物語。ストーリーのもととなっているのは、齊藤監督の短編「バランサー」の脚本も担当した放送作家・はしもとこうじの実体験。真実から生まれた物語は、普遍的な家族の愛と憎しみ、人生の機微をじんわりと、でも確かな強度で浮かび上がらせ、観る者の心に深く迫る。

 

受賞歴

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